銀河丼TLにただようもの

#銀河ノベル <3>

銀河丼TLにただようもの

#銀河ノベル <3>

突き刺すような夕陽に目を細めた。踏切を渡った君が振り返る。逆光になった姿は、世界に焼きついた影のようだった。僕に手を振る君の表情は見えない。降りる遮断機。高く鳴るシグナル。通過する車両。気付けば西日の中に君の形はなく、僕はその名前さえ思い出せないことを思い出す。
世界は何かを忘れたとき、前に進むそうだ。忘却はエントロピーを増加させ、世界を一歩終わりに近づける。
「許したことほど簡単に忘れてしまうなら、終末の景色はどんなに優しいのだろうね」
いつの間にか日は沈み、黄昏がかすかな名残を留めていた。じきに夜がくる。焼きついた影は瞼の裏に消え、もう二度と、思い出すことはないだろう。

[2017/8/21]

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村谷由香里さんが #銀河ノベル として投稿してくれた短い作品です。